研究概要 |
肉用子牛を放牧飼育するとき,その成長が地域により,また季節により大きく変動する。その要因を解析してきた代表者らのグループは,放牧草地の植生の草種構成が子牛の成長に大きく影響していること,その影響は,太陽エネルギー流が変換される3つの段階に分けて考えられ,草種の影響は,供給量〜採算量ばかりでなく,摂取消化量から代謝エネルギー量への変換と,代謝エネルギーから体重増加(成長)のエネルギー量までの変換の,両方のエネルギー効率にも大きく及んでいることを寒地型牧草の放牧地と暖地型牧草の放牧地との比較実験から明らかにしてきた。 この知見をさらに実証的なものとする目的で,亜熱帯である沖縄で,主にバヒアグラスとパンゴラグラスの放牧草地で,放牧時のエネルギー代謝を比較するとともに,やや冷涼な温帯である神奈川県北部山間地でも,レッドトップとトールフェスクの放牧草地においても,同様な測定を行なった。 これらの結果,代表者らの仮説として,イネ科に属する放牧地植物を,4つの亜科のレベルで区分するとき,子牛の代謝エネルギーから増体までのエネルギーの変換効率が草種の亜科の違いによって先ずその高低が決まってくる,という想定の一部が検証されたと考えられた。また,その亜科のなかでは,ウシノケグサ亜科(温帯性,寒地型草種)の効率がもっとも高く,ついでキビ亜科(亜熱帯性,暖地型牧草種,パンゴラグラスなど)が高く,スズメガヤ亜科がそれに次ぎ,タケ亜科が低い,という代表者らの想定のうち,タケ亜科に属するネザサ草地の放牧子牛とネザサの放牧に対する反応をみたところ,ネザサは上記効率としては低いが,草地の持続性からみたときは,高い能力を持つことが示唆された。
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