研究概要 |
インターフェロン(IFN)はウイルス感染動物細胞で産生される抗ウイルス性誘導タンパク質である。IFNは二重鎖RNA存在下で2,5-oligoadenylate(2,5-A)合成酵素(S)生成を誘導し、2,5-Aを生成するとともにcyclic AMP非依存protein kinase(PK)を生成する。これらの主な作用として2,5-Aは不活RNaseLを活性化しウイルスRNAを切断し、PKは65Kリボゾームタンパクをリン酸化して、不活化しウイルスのmRNAによるポリゾーム形成を阻害する。Selaらのグループはウイルス感染植物の過敏感反応において、動物細胞でのINF様システムの発現のあることを示唆した。しかし本研究においてタバコモザイクウイルス(TMV)およびキュウリモザイクウイルス(CMV)感染タバコおよびササゲ葉の過敏感反応において動物α、βおよびγ-INF抗体を用いたウエスタンブロットから、この種のタンパクの生成はないこと、また2,5-ASおよびPKのcDNAをプローブとしたノーザンハイブリダイゼーションとラジオイムノアッセイ法による酵素活性の測定から、2,5-ASおよびPKのcDNAと相同性のあるmRNAは検出されず、また2,5-ASおよびPK分子も検出されなかった。以上の結果からウイルス感染植物細胞に動物INFシステム様の代謝は存在しないと結論した。 ヒト2,5-AS cDNAを組入れた形質転体(タバコ)では本酵素活性は認められなかったが、そのmRNAは発現しており、TMVおよびCMV接種により病微発現の遅延など抵抗性が認められた。対照として用いたルシフェラーゼ形質転換体ではこのような抵抗性は認められなかった。2,5-AS形質転換体ではそのmRNA生成量はかなり多く、ウイルス増殖抑制の原因の1つとしてco-suppressionが考えられる。Protein kinase形質転換体では明らかにこのcDNAが植物ゲノムに組み込まれたにも拘らず、そのmRNAの発現は検出されなかった。しかし2,5-AS形質転換体よりも程度は弱いもののウイルス抵抗性は認められた。この機構についても現在検討中である。日本において植物におけるINF関連代謝について検討したものは本研究が最初であり、最近は2,5-ASおよびRNase Lの遺伝子を導入した植物における抵抗性発現(Mitraら、Ogawaら)など世界的にこの分野の研究が進展してきた。
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