研究概要 |
本研究はアブラナ科植物の自家不和合性について,その分子機構の解明のため,S遺伝子座にあると予想される遺伝子群の構造と機能の解析を中心に,以下の3点について研究を計画したものである。そのそれぞれについて,以下,研究の成果を略述する。 1.自家不和合性に関わる遺伝子のcDNAとゲノム遺伝子の解析 Brassica campestrisのS8,S12株を材料として,それらのSLG(S-糖タンパク質)および,SRK(S-レセプターキナーゼ)について,それらのcDNAを単離し,塩基配列を決定した。SLGとSRKの細胞外ドメインのアミノ酸配列のレベルでの相同性は約80%であった。また,SRK遺伝子間で,キナーゼ領域の相同性はきわめて高かった。一方、ゲノム遺伝子については,S9,S12株について,SLG遺伝子のプロ-モーター領域の解析を行い,両者が相同性の高いことを明らかにした。 2.組み替え体植物の作成によるSLG,SRKの機能解析 SLG8cDNAのアンチセンス遺伝子を35SプロモーターとSLGプロモーターのあとに連結したコンストラクトを作成し,アグロバクテリウムの系で,B.rapaに形質転換した。形質転換体では,アンチセンス遺伝子がSLG,SRKのmRNAを減少させ,自家不和合性が打破されていることが判明した。 3.大腸菌を利用したSRK遺伝子の発現とキナーゼ活性の確認 SRKのキナーゼ領域をGST発現ベクター系を用いて,大腸菌で発現させ,得られた融合蛋白質を精製し後,ATPで処理することによって,この蛋白質が燐酸化されることを明らかにした。
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