研究概要 |
本研究の目的はリアノジン受容体の生体レベルでの生理的機能の実体に迫ることであり、そのために変異モデル動物を作製し、その動物を様々な視野から解析を行うことを計画した。主な研究成果を以下に列挙する。まず、ショウジョウバエの系におけるリアノジン受容体遺伝子を解析しその変異株の検索を行ったが、現在まだ報告されていなかった(FEBS Lett. 337,81)。そこで、胎性幹細胞(ES cells)を用いた相同組み換えにより骨格筋型リアノジン受容体の欠損モデルマウスの作製を行い、骨格筋型リアノジン受容体は筋細胞の形態的成熟においても興奮収縮関連の形成においても必要不可欠な分子であることを示した(Nature,369,6481)。また、この変異マウス骨格筋の微細構造の観察から、本受容体は細胞表層膜と筋小胞体膜の近接部においてその両膜間の距離を規定する分子であるが、その形成には必須ではないことを明らかにした(Proc. Natl, Acad. Sci. USA. 92,3381)。さらに、変異マウス骨格筋には脳型リアノジン受容体が存在することを証明し、それまで適当な実験材料がなく行うことが不可能であった機能的解析を行うことにより、そのイオンチャンネルとしての生理学的性質を明らかにした(EMBOJ. 14,2999)。 これらの研究により、哺乳動物における骨格筋型リアノジン受容体の個体レベルでの機能をほぼ明らかにすることができ、リアノジン受容体サブタイプ間での生理機能の差異について初めて具体的な実験データに基づいて示すことができた。
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