研究概要 |
1.エンドセリン受容体サブタイプの多様性に関する薬理学的研究 エンドセリン受容体には,現在2種(ET_A, ET_B)が知られている。従来,ET_A受容体が血管平滑筋上に存在して収縮作用を現わすとされていたが,我々は血管平滑筋,特に静脈にはET_AのみならずET_B受容体が存在し,共に平滑筋収縮に寄与することを示してきた。さらに,我々は,薬理反応の特性解析から,ET_A受容体にもET_B受容体にも,それぞれ2種類のサブタイプ(ET_<A1>, ET_<A2>, ET_<B1>, ET_<B2>と命名)が存在する可能性を示唆してきた。これら複数のサブタイプが実体として存在する可能性を探るために,ET_B受容体ノックアウトマウスを用いて,薬理学的解析を行った。このマウスの摘出組織では,既知のET_B (ET_<B1>)サブタイプを介する反応も,アンタゴニスト抵抗性の新しいET_Bサブタイプ(ET_<B2>)と思われる受容体を介する反応も,ともに消失していることが明らかとなり,ET_<B1>型,ET_<B2>型の両反応が,同一遺伝子に由来する受容体を介して生じていることが判明した。 2. Hirschsprung病におけるエンドセリンBレセプター遺伝子の解析 Hirschsprung病(HSCR)は先天的な下部消化管の壁内神経節細胞の欠如による蠕動運動の障害のため、消化管内容が停滞し巨大な結腸の拡張を示すことを特徴とし、出生5000に対し1人と比較的よくみられる代表的な小児消化管疾患である。最近、米国の柳沢グループのノックアウトマウスやHSCRモデルマウス、またHSCR多発家系の研究により、ET-3、ET_Bレセプター遺伝子の変異が病因遺伝子の1つに加えられた。今回我々は、本邦のHSCR患者のET_Bレセプター遺伝子の解析を行い、3例の膜貫通部の変異を明らかにした。
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