研究概要 |
研究には,内分泌細胞であると共に神経系のモデルとしての意図も含め,培養ウシ副腎クロマフィン細胞を用いて遂行した。 1)培養条件の設定 従来,ウシ副腎クロマフィン細胞の培養は初代培養であることから,培養期間も短く数日間の培養細胞が研究に用いられてきた。本研究を遂行するためには長期間の培養系の確立が必須であったため,新たな培養方法を模索し比較的長期間(約3週間)の培養系を確立した。 2)細胞形態学的検索 副腎は皮質と髄質から成り,クロマフィン細胞は皮質ステロイドホルモンに常時さらされている。皮質細胞をできるかぎり除去した副腎クロマフィン細胞に,皮質ステロイドホルモンと神経成長因子を適用し形態変化を観察した。神経成長因子の適用は,副腎皮質ステロイドホルモンの適用に比べ神経突起の伸展を有意に増加した。このことは,副腎クロマフィン細胞が内分泌細胞から神経細胞へと転換している可能性を示唆するものである。 3)分子薬理学的検索 神経ぺプチドや生理活性アミンによる細胞内Ca^<2+>の増減機構およびカテコールアミン生合成機構の解析を遂行した。神経細胞は神経伝達時に刺激され細胞内Ca^<2+>の増加が認められる。この増加した細胞内Ca^<2+>は,次の神経刺激を伝えるために速やかに減少しなければならない。ブラジキニン,ヒスタミンなどによる副腎クロマフィン細胞からのCa^<2+>排出機構について検討を加えた。これらのCa^<2+>排出は,それぞれの受容体を介し,細胞外液Na^+に依存した機構であることが明らかとなった。また,脳内神経ペプチドであるPACAPによりカルシウム依存性キナーゼとcyclic AMP依存性キナーゼを介した機構によりカテコールアミン生合成系を促進することも明らかとした。このような神経ペプチドや生理活性アミンによる研究成果は,副腎クロマフィン細胞を神経細胞として考えると非常に興味深い。
|