研究課題/領域番号 |
06454165
|
研究種目 |
一般研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
医化学一般
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高沢 伸 東北大学, 医学部, 講師 (50187944)
|
研究分担者 |
那谷 耕司 東北大学, 医学部, 助手 (90202233)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1995
|
研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
|
配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1995年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
1994年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
|
キーワード | CD38 / cyclic ADP-ribose / ADP-ribosyl cyclase / cyclic ADP-ribose hydrolase / 細胞内情報伝達物質 / トランスジェニックマウス / インスリン分泌 / 遺伝子クローニング / 部位特異的点突然変異導入法 |
研究概要 |
本研究の目的は研究代表者らが新しく見出した細胞内情報伝達物質であるcyclic-ribose (cADPR)代謝の全容を解明するために哺乳動物cADPR分解酵素の実体を明らかにすることである。本研究により以下の新知見が得られ、研究目的が達成された。 1)ヒトリンパ球表面マーカーと考えられてCD38にcADPR合成・分解酵素活性が検出され、CD38がヒトcADPR分解酵素であることが示された。また、CD38のcADPR分解活性はグルコース刺激により上昇する生理的濃度のATP (2-10mM)により阻害され、結果的にcADPRの産生量が増加する事が明らかとなり、グルコース刺激時のβ細胞で[グルコース刺激→細胞内ATPの上昇→CD38のcADPR分解活性の抑制→細胞内cADPR濃度の上昇→細胞内Ca^<2+>プールからのCa^<2+>動員→インスリン分泌]というcADPR分解酵素調節機構を介するインスリン分泌機構の提唱に至った。 2)ラット膵ランゲルハンス島cDNAライブラリーからヒトCD38のホモログを単離した。このcDNAをCOS-7細胞で発現させcADPR代謝活性を測定したところ、ヒトCD38と同様にラット蛋白質にもcADPR合成活性とcADPR分解活性の両者が認められ、1)で提唱したcADPR分解酵素活性の調節を介する機構が実際の膵ランゲルハンス島で機能している可能性が強く支持された。 3)ヒトCD38を膵ランゲルハンス島β細胞で過剰発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製した。このTgマウスはグルコース刺激によるインスリン分泌が増強しており、グルコース刺激時の血糖はコントロールに比して低下していた。また、グルコースやロイシン代謝産物のケトイソカプロン酸のように代謝されて細胞内ATP濃度上昇を来す刺激によりTgマウスのインスリン分泌は増強したが、ATP感受性K^+チャンネルのブロッカーであるトルブタマイドや細胞膜興奮を促して細胞外からのCa^<2+>動員をもたらすKClはTgマウスのインスリン分泌を増強しなかった。このTgマウスランゲルハンス島のCD38のcADPR分解酵素活性はATPにより濃度依存的に抑制され、細胞内cADPRもコントロールに比して高いことから、1)で提唱したcADPR分解活性の調節によりインスリン分泌機構の重要性がin vivoで示された。 4) cADPR合成・分解の両活性を有するラット、ヒトCD38とcADPR合成活性のみ有するアメフラシcADPR合成酵素と比較したところ、CD38ではアメフラシ酵素中に含まれる10個のシステイン(Cys)が保存されているだけでなく、CD38間でのみ保存されている2個のCysが存在した。そこで、点突然変異導入法によるこのCysの改変を中心にCD38のcADPR合成・分解活性に必須のアミノ酸残基を同定を試みた。この結果、この2個のCys(ヒトCD38のCys119とCys201)がcADPR合成、分解活性に必須であり、これらのCysをアメフラシ型であるLysとGluに変異させると分解活性が消失することが明らかとなった。 5)ヒトCD38遺伝子を単離し、その構造と染色体座位を明らかにした。CD38遺伝子はヒト第4染色体短腕15上にマップされ、全長〜100kbpで8つのエキソンと7つのイントロンから構成されいた。遺伝子構成を先に我々がその構造を明らかにしたアメフラシのcADPR合成酵素と比較すると極めて保存性が高く、両遺伝子が共通の祖先型遺伝子から由来した可能性が明らかになった。
|