研究概要 |
メイラード反応後期生成物(AGE)に対する細胞膜レセプター(AGEレセプター)は,AGEの老化現象や糖尿病合併症への関与を解く重要な糸口として注目されている。本研究により以下の結果が得られた 1.マクロファージ(Mφ)AGEレセプターの分離:Mφ系細胞から分離精製したAGE結合能を有する4つの蛋白はN末端解析の結果,3つは既知蛋白であり,28K蛋白は新規蛋白であり現在解析中である。 2.Mφスカベンジャーレセプター(MSR):MSRのcDNAを過剰発現したCHO細胞は,AGE蛋白に対して有意な取り込み能を示しこの反応はMSRの特異的リガンドであるアセチルLDLにて効果的に阻害された。又,本細胞によるアセチルLDLの取り込み反応はAGE蛋白によって有意に阻害された。又,MSR遺伝子ノックアウトマウスから得た腹腔Mφは野生型に比して,AGE蛋白の取り込み能が30%以下に低下しており,MφによるAGE蛋白の特異的取り込みは主として,MSRを介していると考えられた。 3.血管平滑筋細胞(SMC)のAGEレセプター:ウサギ大動脈SMCはAGE蛋白に対し特異的に結合するAGEレセプターを有し,リガンドの取り込み反応に関与し,AGE蛋白は本SMCに対して細胞遊走(ケモタクシス)を惹起した。しかし,これらの取り込み及び遊走反応はMSRのリガンドであるアセチルLDLによって阻害されなかった。従って,ウサギ大動脈SMCに発現しているAGEレセプターはMSRと異なるレセプターと考えられた。リガンドブロッティング法による解析では,本レセプターの分子量は200kdであり,現在,その分子構造を解析している。
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