配分額 *注記 |
7,200千円 (直接経費: 7,200千円)
1996年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
1995年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1994年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
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研究概要 |
ビブリオ属菌は自然環境水を棲息域とする細菌で,水産物の摂取の多いわが国ではビブリオによる消化器感染を頻繁に起こすので,その病原性発現機構,特に病原因子の解明は重要な問題である。多くの病原性ビブリオは溶血毒を産生するが,その作用機構の解明が発症機構の解明さらには予防・治療の開発につながるものと思われる。本研究ではViabrio vulnificusとV.mimicusの溶血毒(VVH,VMH)を選んでin vitroでの溶血機構を詳細に比較検討するとともに,その成果をin vivoでの作用機構の解明に応用することを目的として検討を行った。本研究は平成6年度から始まったものであり,6,7年度に株間の毒素の性状の異同や作用機構の解析などに新たな進展がみられたこと,VMHに関しては細胞毒性だけでなく,下痢毒素としての役割が示されたことなどの成果を挙げた。さらに最終年度の8年度には,主としてVMHの構造と機能に関してタンパク化学的ならびに免疫化学的解析を加えた。VMHに対するモノクローナル抗体の作成を行うと何れのクローンもIgMであり,VMHとの結合性は示すが中和活性は認められなかった。しかも,免疫をしていない対照IgMでも結合性が認められ,IgMタンパク質のシアル酸を認識する結合であることが示唆された。しかし,VMHをエチレングリーコール(EG)を使わない方法で精製した場合には,ある程度の中和活性が認められ,EGによるわずかな構造変換が活性中心の表面露出に影響を与えることが示唆された。この構造変換は蛍光化学分析等で認識されるほど大きなものではないが,細胞表面の結合部位であるシアル酸を認識する構造の変化と考えられる。本毒素はV.mimicusの下痢毒素であるので,VMH分子と標的との結合の機構に関して本研究で得られた情報は下痢機構の解明に繋がるものである。
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