研究概要 |
C型肝炎ウィルス(HCV)サブタイプの持つ臨床的意義について分析し、以下の成績を得た。 1.新しいサブタイプの分析法:世界各国から集めた約1,600の血清についてついて分析し、1-4型までの遺伝子型の識別可能な分析系を確立した。各種の分析法と我々の開発した方法の併用によって、サブタイプの正確な分析が可能となり、検出感度も高くなった。2.サブタイプ別にみたインターフェロン(IFN)の効果:わが国の多数列の分析から、1b型(混合型含めて)での効果は不良で、2a,2b型では良好であることがあることが確認できた。外国症例でも、1b型での効果は不良で、3a型での効果は良好であった。3.サブタイプの差によってIFNの効果の相違する機序:IFN治療時の血中HCV-RNA量の経時的推移から、その反応は、HCV量の急速に低下する良好反応群型、ほとんど低下しない無反応型、および両者の中間の部分反応型の3型に大別された。無反応型は1b型にのみ認められ、2a,2b型には全く認められず、IFNの効果の差はHCVの型の質的な差によっていると考えられた。NS5A領域のHCVのquasi-speciesをsingle strand conformation polymorphism法で分析すると、無反応型では大部分がIFN抵抗株であり、一方、良好反応型では大部分がIFN感受性株であった。4.世界各国でのHCVサブタイプ:世界の多くの国で認められる基本形は1a,1b,2a,2b,3aの5型で、その他の型は限られた地域にのみ存在すると考えられた。なお、3a型はオーストラリヤに、4a型はエジプトに多かった、わが国でもその頻度はきわめて低率ではあったが、検出された。5.1b型と原発性肝癌との関係:世界各国での肝癌の発生頻度と1b型の頻度は有意に相関し、わが国でも、各県別の肝癌の頻度と1b型の頻度は有意に相関した。肝癌での1b型の頻度は有意に高率であり、また、1b型では肝癌の発生までの期間が短期間であった。これらのことから、1b型は発癌性のより強いHCVと考えられた。
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