研究概要 |
川崎病48例,対照疾患として麻疹12例および健常小児30例の血清sTNF receptor値を測定した。川崎病および麻疹は急性期と回復期でペアでサンプリングした。川崎病急性期はいずれも治療前にサンプリングし、全例にヒト免疫グロブリン製剤を投与した。川崎病急性期のsTNF receptor値は高値を示し、回復期に正常範囲内まで低下した。また冠動脈病変併発例では非合併例に比しより高値だった。麻疹では上昇はみられなかった。さらに、血清CRP値と正の相関がみられたが、冠動脈病変併発の示標としてはsTNF receptor値がすぐれていた。sTNF receptorの高値はヒト免疫グロブリン製剤による治療を行なっても、冠動脈病変の併発を予知しうる因子と考えられた。 ついでMagnetic cell separator (MACS)でCD14陽性マクロファージ/モノサイトの分離を行い,その形態像を電子顕微鏡で検討した。対象は川崎病の患児5例(年齢3ヶ月〜3歳5ヶ月,平均年齢1歳8ヶ月,平均病日5日),細菌性股関節炎(年齢10ヶ月),伝染性単核症(年齢1歳)を疾患コントロールした。分離したCD14陽性単球/マクロファージをグルタール固定,オスミウム後固定,エポン包埋などの処理をほどこし電子顕微鏡で観察した。川崎病の患児のCD14陽性単球/マクロファージは,疾患コントロールに比べて核の構造が複雑に分葉し,核小体が明瞭なものが多く認められ,核小体が2つ認められるものもあった。また細胞質内においては,疾患コントロールに比べ非常に多くの顆粒が認められた。densityの高いものや低いものなど様々な顆粒を認めたが,特異的な封入体は認められなかった。これらの所見は重症例ほど強く,特に冠動脈病変合併例で強く認められた。このような形態的変化はTNFαなどのサイトカインの分泌との関連が予想され,現在TNF receptor遺伝子mRNAの定量を試みている。
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