研究概要 |
胆道癌の分子遺伝子学的ならびに分子生物学的特性を総括的に解析し以下の研究成果を得ることができた. 1.胆内胆管癌:胆内胆管癌は肝門部胆管癌と同じく胆管上皮を発生母地としているが,slow growingな進展を示す肝門部胆管癌とは対照的に,発育は急速でその治療成績は極めて不良である.これら両者の各種分子生物学的因子を比較すると,肝内胆管癌では肝門部胆管癌に比して,癌抑制遺伝子p53陽性例や癌細胞核DNA量がAneuploidのものが有意に高率に認められ,肝内胆管癌は肝門部胆管癌に比して強い細胞増殖活性を有していることが明らかとなった.また,高度進行肝内胆管癌切除7例の染色体欠失の有無を検索したところ,全例に17p染色体欠失を認め,さらに16q欠失を認めた6例はいずれも3年以内に再発志望したのに対し,16q欠失を認めなかった1例のみは5年以上無再発生存しており,16qならびに17p染色体が肝内胆管癌の発生・進展に関与していることが示された. 2.胆嚢癌:癌深達度がpmまでにとどまる早期胆嚢癌34例を集計し,各種分子生物学的因子を進行癌と対比すると、早期胆,嚢癌といえどもMIB-1標識率が30%以上の高度増殖能を呈するものが20%を占めており,また癌抑制遺伝子p53の発現例が30%に認められた.今後はこれらの結果をもとに,進行癌へと進展する早期癌と,早期にとどまるものとの分子生物学的特性の相違について検索を進める予定である.一方,進行胆嚢癌切除例の種々の病理組織学的ならびに分子生物学的因子を解析し,予後との関連性を検討したところ,切除後3年以上の長期生存例はリンパ節転移がなく,かつ癌細胞核DNA量がDiploid,癌遺伝子K-rasの発現陰性例に限られていた.リンパ節転移の有無や癌細胞核DNA量は術中迅速診による検索が可能なことから,現在,術式選択のためのプロトコールを作成し,症例を集積中である.
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