研究概要 |
[目的]本研究は,噴門部機能をVector VolumeとYield Pressureにより直接的評価を行い,さらにInsulin負荷試験による胃液検査,24時間食道内pHモニタリングによる評価を加え,逆流性食道炎の発生機序と外科的噴門部修復術の有用性を分析することにある。 [対象と方法]健常者8例と十二指腸潰瘍症例5例の術前後(選択的近位迷走神経切離術+前壁半周性噴門形成術)ならびに逆流性食道炎8例の術前後(全周性噴門形成術)において,被検者本人(保護者)の承諾の上で,下記方法にて測定を行った。先端より5cmの位置に水平8方向に内圧測定用の側孔を設けたインフュージョン式内圧力カテーテルを挿入し,1cm/秒のmotorized pull through法にて,Vector Volume(VV)を測定した。そして約1000mlの空気を胃内に送気した後に同様の測定を行った。そして,胃内への送気を行う前の胃内圧と送気後胃伸展時における胃内圧を求め,両者の差をYield Pressure(YP)とした。また症例により,承諾の上で,胃液検査,24時間pHモニタリング検査を施行した。 [成績]逆流性食道炎(十二指腸潰瘍を合併しない)の胃酸分泌は,健常者に比べ,やや低値でガストリン反応には差を認めなかった。YPとVVでは,後者の方が,逆流性食道炎の有無の弁別性に優れていた。食道裂孔ヘルニアを認めない十二指腸潰瘍症例のVVは,食道裂孔ヘルニアを伴う症例,逆流性食道炎症例に比べ,有意に高く,噴門形成術により,その値が増加した。過度の増加では,通過障害が,軽度増加では,効果不良が認められた。VVによる評価は,逆流防止機能の判定ならびに噴門部修復手術の術式選択に関し有用な検査法になると考えられるが,症例が十分とは言えず,さらに症例を集積し,検討を重ねる予定である。
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