研究分担者 |
環 正文 徳島大学, 医学部附属病院, 医員
先山 正二 徳島大学, 医学部附属病院, 医員
近藤 和也 徳島大学, 医学部, 助手 (10263815)
住友 正幸 徳島大学, 医学部附属病院, 助手 (60236049)
宇山 正 徳島大学, 医学部, 助教授 (00168759)
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研究概要 |
肺移植モデルを用いて移植片浸潤リンパ球のT cell receptor Vβ geneの発現パターンの差異により、拒絶反応の早期かつ特異的なモニタリングが可能かどうかの検討を行っている。現在までに32例のBN toLEWおよびLEW to LEWの同所性左肺移植モデルを作成し、移植後3日目および5日目の移植肺、レシピエントの脾臓よりRNAを抽出し、RT-PCR法によりcDNAを作成した。現在までに塩基配列が明らかにされている24種類のラットT cell receptor Vβ geneのうちVβ1,Vβ2,Vβ3.3,Vβ5.2,Vβ4,Vβ6,Vβ7,Vβ8.1,Vβ8.2,Vβ8.3の計10種類のVβ geneに対するプライマーと,1種類のCβ(TCRβ鎖のconstant domain)geneに対するプライマーを作成した。抽出したcDNAをtemplateとし各VβプライマーとCβプライマーを用いてPCR法によりVβmRNAの発現パターンを検討した。その結果移植後3日目および5日目の異系移植群の移植肺においてVβ2,Vβ4,Vβ8.2の発現が増強される傾向が認められた。しかし正常LEWの脾細胞にもVβ2,Vβ8.2の発現増強が、検討した他のVβの発現より強い傾向が認められた。従ってレシピエントであるLEWラットにおいては本来Vβ2,Vβ8.2を発現したT細胞の割合が多い可能性がある。現時点ではVβ4については拒絶肺において発現が増強すると考えているが、semiquantitative PCRにより検討する必要があり、現在進行中である。また今回検討していない残る14種類のVβ geneについても今後検討が必要である。 またもう一つのテーマである、拒絶反応と感染をVβ geneの発現で区別できるかという点に関しては、現在sendai virusを経気道的投与した感染モデルを作成中であり、virus感染肺においてもVβ geneの発現パターンについて検討する予定である。 最終的な結論が得られるには今しばらく時間が必要であるが、移植後3日目の異系移植肺においては拒絶反応にともないVβ4mRNAの発現が増強が認められたこと、およびこの移植モデルの移植後3日の拒絶反応はearly vascular phaseに相当し、この時点での免疫抑制剤であるサイクロスポリン投与により移植肺の拒絶進行が阻止できることを考えると,Vβ geneの発現パターンが拒絶反応のモニタリングに応用できる可能性があると思われる。今後は、臨床に応用するためには気管支肺胞洗浄により得られたリンパ球やTBLBにより採取された組織片においても同様な解析が可能か否かを検討する必要があると考えている。
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