研究概要 |
これまで発行されているラットの定位脳手術用の図譜を可能な限り入手して,小脳橋角部における蝸牛神経の解剖学的関係についての記載について検討したが,蝸牛神経そのものについては詳細な記載がないことが分かった.そこで,はじめにラットの側頭骨標本を作成してラット小脳橋角部における蝸牛神経の解剖学的位置関係について検討した.その後,手術用顕微鏡下に蝸牛神経に到達する方法を確立した.これらの実験手技を用いて,ラット頭蓋をラット用定位脳手術装置に固定して,手術的に露出した蝸牛神経に到達する為の定位手術的条件を求めた.これによって,定位脳手術的にラット蝸牛神経に到達して,これに圧迫損傷を負荷しうる基本的方法を確立することができた.その後,圧迫子の先端に記録電極を装着して蝸牛神経に圧迫負荷を加えつつ,蝸牛神経複合活動電位,聴性脳幹反応を経時的に同時記録した.そして,蝸牛神経複合活動電位がKilled end potentialsを示す位置で圧迫子を止めて,そこで一定時間圧迫子を保持した後,これを抜去した.ラットを1-2週間生存させた後,経心臓的にラットを灌流固定し,側頭骨を摘出脱灰,組織学的検討を加えた.現在,圧迫損傷による蝸牛神経の変性を主としてラセン神経節細胞数の変化を分析することによって評価している.これまでの検討では,蝸牛神経に圧迫損傷作成後15分経過した時点での聴性脳幹反応所見によってラットを数群に分類することが可能であることが分かった.すなわち,その各群に属するラットは,ほぼ一定のラセン神経節細胞数の脱落を示すのである.さらに,詳細な検討が必要であるが,定量的評価可能な蝸牛神経損傷モデルをin vivoのレベルで確立しつつある.
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