研究概要 |
Superoxide(O2^-)の細胞障害機序解明のため、その消去酵素であるヒトSuperoxide dismutase(SOD)遺伝子導入マウス(Tg)とコントロールマウス(nTg)において中大脳動脈(MCA)閉塞による一過性脳虚血モデルと,15gの重りの自由落下による頭部外傷モデルにおいて,immediate early geneのc-fosと70kDa熱ショック蛋白(hsp70)のmRNAの発現について検討した.MCA閉塞後のc-fosとhsp70の発現についてまずラットを用いて検討した後,マウスにおいてMCA閉塞10分と60分の2虚血群において検討した.梗塞を形成しない10分虚血群ではTgにおいてc-fosとhsp70の発現時間の延長および発現領域の拡大が認められ,Tgが軽度の虚血に対してよりsus ceptabilityが高いことが示された.しかし,60分虚血群における梗塞巣,hsp70およびc-fosの発現領域は,Tgにおいて有意に縮小しており,明らかな保護効果が認められた.頭部外傷モデルにおいても,外傷後のc-fosとhsp70の発現はTgにおいてより縮小しており,また脳浮腫形成と血液脳関門の透過性亢進もTgで有意に抑制され、頭部外傷後の二次的障害におけるSODの保護効果が明かとなった。さらに、O2^-の血液脳関門におよぼす影響を検討するため、マウスの脳血管内皮細胞を膜上に一層に培養したモデルを作成し、細胞内にO2^-を発生するmenadionを添加した後の電気抵抗の変化を測定した。しかし,TgではnTgに比し有意に電気抵抗が減弱し,鉄キレート剤の前投与によりnTgと同様の値に復したことより,TgではSODの増加によりHaber-Weise反応を介しH2O2からhydroxy radicalの産生を惹起した可能性が示唆された。これらの結果はSODの保護効果を示すものの,O2^-やH2O2の代謝過程においてSODの増加がhydroxy radicalの産生を促し、細胞障害性に働く可能性も示唆され、SODが保護効果を発揮するためには、SODにより産生されたH2O2の消去系が十分に作動することが必須であると考えられた。
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