研究概要 |
機械的刺激が骨の形成に深く関わった因子であることは、周知のことであるが、骨の細胞にかかる機械的刺激の成分、その刺激が細胞に影響を及ぼすに至る引き金、その引き金から核に至るシグナル伝達、等、そのメカニズムは解明されていない.本研究で、我々は、骨芽細胞様細胞株MC3T3E1に機械的刺激を負荷し、増殖刺激で誘導されるearly response geneであり、転写因子をencodeするegr-1の発現を指標として、そのメカニズムを解明することを試みた.負荷する刺激として、培養皿をshakeするこという方法が、非常に有益な情報を提供してくれることを見出した。1分間のshakeでegr-1 geneが30分後をピークとして,15分から45分後の間に誘導された.その誘導はインドメタシン、サララシン(アンギオテンシンIIアンタゴニスト)、Rp-cAMP(cAMPアンタゴニスト)、TPA長期処理(PKC枯渇化)、A23187、コルヒチン、サイトカラシンD、GEDTA、Gd(Stretch-Activated Ion Channel Blocker)等によって大きく変動することはなかった.しかし,シクロヘキシミド、DRB(RNA合成阻害剤)、ジェニスタイン(チロシンキナーゼ阻害剤)、ハービマイシン(チロシンキナーゼ阻害剤)、BAPTA/AM(細胞内カルシウムキレート剤)は完全にegr-1 geneの誘導を阻害した.以上は,メデイウムに血清を加えた場合の結果であるが,血清を除くと上記の誘導はみられなかった.血清中の活性因子と考えられているEGF,FGF,TGFβ,LPA等の添加はこの誘導を回復させなかった.以上のことから、MC3T3E1細胞に培養液の流動を負荷することによって,細胞にegr-1 geneが誘導される.その誘導には,チロンシンのリン酸化,カルシウム,及び,血清中の因子が必要であること,が見出された。また,新しい蛋白合成または,不安定な蛋白質が介在していることが示唆された.
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