研究概要 |
本研究は,微小血管における神経,内皮及び血液細胞の血管トーヌスに及ぼす影響を検討したものである.併せてアシドーシスの影響も検討した.この研究での問題点は、血管バス内の温度の不均一性である.文献にある従来の方法を用いるとバス内の温度分布は2〜3度の差が見られ,望ましいものではない.そこで,バス容量を1mlと小さくすることによってその温度分布を±0.5度に保つことができた.また,血管内灌流も考慮したが,確実な流量を得ることは困難であり,この方式は採用しなかった.従って,血管の一端はガラスキャピラリーを挿入し圧をサーボコントロールで一定にし,他端は盲端とする実験系とした.また,血液細胞(白血球)の影響を観察するにあたっては,血管外灌流方式では採取する白血球量が膨大となり,実験法を次のように変更した.1)一定濃度の白血球浮遊液を直接バス内に投与した.2)一定の温度を保つため、保温はニクロム線でおこないコンピューター制御した.3)従来から用いたKrebs液では時間により炭酸ガスが消失し溶液のpHがアルカロ-シスに傾くため,Hepesバッファを用いた.以上の方法によりブタ前脊髄動脈、冠動脈を主として用い、次の結果を得た.1)内皮の確認:ブラディキニン10^<-7>Mでの拡張の有無で内皮の温存を確認できた.内皮を剥奪した標本では,ブラディキニンで拡張が全く見られなかった.2)血管支配神経:白金電極を用いて経壁電気刺激(20mA,刺激幅0.3msec,1Hz)を行った.その結果、経壁電気刺激でわずかに収縮がみられた.この収縮物質はnorepinephrineではない、何故ならnorepinephrineは血管拡張をきたしたからである.この収縮transmitterについては今後の課題となった.3)白血球の作用:ブタ冠動脈で低酸素は白血球の拡張作用を増強した.前脊髄動脈では、白血球は10^4/mlから拡張が見られ、10^5/ml,10^6/mlまでその効果が見られた.10^7/mlでは白濁し血管径を測定することは困難であった.4)アシドーシスの影響:炭酸ガス分圧そのものはブタ脊髄血管を収縮する作用があるが,pHの低下は逆に血管を拡張することが証明された.以上の結果から,微小血管はわれわれが従来から行った太い血管の反応性と異なる点もあることがわかった.
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