研究概要 |
メイプルソンA,D,Fシステム下で総ガス流量を10l/分、吸入一酸化窒素(NO)濃度を0,4,8,12,16,19ppm,酸素濃度を21,40,60,80,100%としたときの二酸化窒素(NO_2)濃度の変化を窒素酸化物測定装置(サーモエレクトロン,モデル42)で検討した。統計処理には一元分散分析とボンヘロニ補正t-testを用いた。NO_2濃度はどのシステムでも吸入NO濃度または酸素濃度が高いほど高かった。従って、NO_2濃度はNO濃度19ppmで酸素濃度100%で最も高く、A,D,FでのNO_2の最大値は0.20±0.03,0.15±0.03,0.17±0.02ppmであった。メイプルソンAでのNO_2はD,Fよりも高く維持された。10l/分の定常流を用いたIMVシステム(ゼクリスト,モデルIV-100B)でもNO_2の値は吸入NO濃度が19ppmで酸素濃度100%で最も高く,最大値は0.10±0.02ppmであった。サーボベンチレータ900Cの低圧送気路から低常流とNOを投与し、成人用呼吸回路の吸気側にソーダライムを用いた場合はソーダライム前後でNO_2濃度の低下が観察された。NO_2の値は吸入NO濃度が19ppmで酸素濃度100%で最も高く最大値は0.26±0.06ppmであった。 重症呼吸不全14例に16ppm以下のNO吸入療法を施行した。14例中、間質性肺炎の2例と術後膿瘍のARDS1例を除いた11例にNO吸入により酸素化の改善と肺動脈圧の若干の低下傾向を認めた。動脈圧、心拍出量には影響を認めなかった。メトヘモグロビン血症は生じなかった。2ppm以下の微量のNO吸入でも酸素化は十分に改善した。しかし、NO吸入療法を施行した11例のうち救命できたのはわずか1例であった。NO吸入療法によると考えられる副作用は認めなかった。
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