研究概要 |
(1)健常者における鼻分泌液並び血清中のSubstance P(SP)およびvasoactive intestinal peptide(VIP)濃度を測定し,これらニューロペプタイド濃度を初めて明かにした。また,鼻分泌液中SP・VIP濃度が血清に比して有意に高値で,この事実より鼻分泌液中のこれらニューロペプタイドは血液からの漏出によるものでなく,鼻粘膜より鼻分泌液中に活発に分泌されていること明かにした。 (2)慢性副鼻腔炎,house dust(HD)鼻アレルギーおよびスギ花粉症患者の鼻分泌液中のSPおよびVIP濃度を測定し,鼻アレルギー患者では鼻分泌液中SP・VIP濃度が健常者に比して有意に高値であるが,慢性副鼻腔炎では有意に低下していることを明かにした。この事実は,慢性副鼻腔炎では鼻粘膜からのニューロペプタイド分泌が障害されていることや,鼻アレルギーにおけるSPと肥満細胞との間のヒスタミン遊離に関わる悪循環の存在を示唆する。 (3)鼻アレルギーにおける鼻分泌液中SP・VIP濃度の抗原並びにヒスタミン誘発による経時的変化を検討し,誘発反応により鼻分泌液中SPおよびVIPは一時に低下し,2〜3時間後には元の濃度に回復することを明かにした。 (4)Azelastine,Ketotifen,OxatomideおよびTerfenadineなどの各種抗アレルギー剤投与による鼻アレルギー患者鼻分泌液中SP・VIP濃度の動態を検討し,これら抗アレルギー剤に投与により臨床効果の著明なものほど鼻分泌液中SP濃度の低下が著明であることを明かにした。この事から,鼻分泌液中SP・VIP濃度が鼻アレルギーの病態を表す良いパラメーターとなる事を示唆すると共に,各種抗アレルギー剤がSPと肥満細胞間おけるヒスタミン遊離に関わる悪循環に作用する可能性を示唆した。
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