研究概要 |
1. Prevotella intermedia ATCC 25611,ATCC 33563および Porphyromonas gingivalis 381を二重固定法(化学固定法)と凍結置換法(FS,物理固定)で固定し,透過電子顕微鏡で観察後,ル-ゼックスFSで画像計測した。二重固定した25611細胞表層構造の幅は,細胞質側から細胞膜13.0,その内葉4.6,中層2.7,外葉3.6,ペリプラズマ間隙2.1,ペプチドグリカン層(PG)6.2,ペリプラズム間隙7.1,外膜9.2,その内葉2.7,中層3.1,外葉3.1nmであった。FS固定した細胞ではPGはみられず,細胞膜11.9,その内葉3.8,中層4.4,外葉3.3,ペリプラズマ間隙8.6,外膜11.0,その内葉3.1,中層3.7,外葉3.7nmであった。化学固定法でPGが観察されると,ペリプラズム間隙の幅は外膜側で大きかった。 2. 患者の了解のもとに採取した全閉鎖性膿瘍内容物から細菌が分離された。0s0_4蒸着試料の走査電顕像では,細菌細胞表層に微細な線維様構造(加速電圧1Kv,10万倍)が認められた。透過電顕像を入力して画像計測した結果,ファゴソームに対する細菌の占有面積率はグラム陰性菌では33.0%,グラム陽性菌では43.8%,細菌細胞に対する莢膜の占有面積率はグラム陰性菌では33.0%,グラム陽性菌では26.7%,グラム陰性菌の外膜由来小胞の直径は平均26.0nm,面積は平均541.0nm^2であった。好中球およびファゴソームに対するリソソームの占有面積率は20.5%と21.1%であった。 これらの事実は,莢膜保有細菌が食細胞内で増殖することや外膜由来小胞が内毒素や組織破壊酵素を口腔組織内に分散させることが,膿瘍形成の一因になることを示唆している。また,デジタル画像計測法で細菌細胞表層構造の幅や宿主の抵抗性因子および細菌の病原性因子を量的・質的に数値化出来ることを示している。
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