研究概要 |
骨吸収阻害薬(カルシトニン,ビスフォスフォネートなど)の効果には,投与時効に依存した大きな日内変動がみられる。この事実は,骨吸収阻害薬の標的部位(骨吸収過程)の感受性が1日を通して恒常な状態にあるのではなく,時間の函数として周期的に変動することを意味している。事実,生理的な条件下におけるラットの血中カルシウムレベル,カルシウムの骨への決着,カルシウムの骨から血中への動員(骨吸収)には,顕著なサーカディアンリズムがみられる。本研究によれば,骨吸収阻害薬の効果は,動物の休止期(明期)に与えると最も大きく,活動期(ラットでは暗期)に与えると小さい。一方,骨吸収活性の生理的なサーカディアンリズムを観察すると,明期において最も高く,暗期には低い。これらをサーカディアンリズムの位相・反応関係から整理すると,骨吸収活性が高い時間帯に骨吸収阻害薬を与えるとその効果は大きく,逆に,骨吸収活性が低い時間帯に与えると,その効果も小さいことを示している。このような結果は,実験計画法,実験値の解釈,治療計画等において,薬物を投与する時刻が極めて重要な意味を持つことを示すとともに、薬物の効果的な使用法,副作用の減弱等に,時間薬理学的な考え方が重要な貢献をなし得ることを示唆している。なお、今回の実験で使用した薬物は,カルシトニン製剤,ビスフォスフォネートが中心であったが,筆者は,現在,エストロジェンを1日の異なった時間帯に,OVXラット(卵巣摘出ラット)に,連続した投与する実験を続けており,投与する時刻によって得られる骨量の増加が大きく異なることを確認している。今後,骨代謝関連の種々の薬物について同様な実験・研究が行なわれることが期待される。
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