研究概要 |
ヒト歯髄由来細胞の培養:ヒト下顎第三大臼歯を抜去後直ちに割断し,歯髄組織を取り出した.DMEM倍地中でこの組織を乾燥させないように約1mm角の細片に切り刻み,レイントンチューブへ移し,DMEMを加えて37°C,5%CO_2インキュベータ-内で培養を行った.約10日後に組織よりoutgrowthした細胞を6代から8代継代し,本実験用のヒト歯髄細胞を得た. 象牙質ディスク上への細胞の培養:ヒト抜去抜去大臼歯の歯冠部より歯軸と垂直に切り出した象牙質円板を新しく考案した細胞培養用チャンバーに取り付け,その表面にヒト歯髄由来細胞を培養した.臨界点乾燥後のSEM観察によりconfluentなcell sheetが形成されていることを確認した. 光重合型コンポジットレジンの細胞毒性と介在象牙質の性状との関係の検討:介在させる象牙質の加齢が細胞毒性試験に及ぼす影響を調べたところ,10才代から40才代の象牙質の間には細胞毒性において有意な差を認めなかったが,これらに比べ50才代以降の象牙質は有意にレジンの細胞毒性を減弱させることがわかった.また,齲蝕を有する歯と齲蝕の無い健全な歯から切り出した象牙質円板を介在して,レジンの細胞毒性を比較したところ,齲蝕象牙質第一層の直下より切り出した象牙質円板を介在すると,健全な象牙質円板を用いた場合に比べて強い細胞毒性が認められた.一方,窩底の一部を含むようにして切り出して得られた象牙質円板を介在すると,細胞毒性は明らかに減弱した.さらに,象牙質円板の表面を各種象牙質前処理材で処理しても,スミア-層を残存させたままの無処理の象牙質円板と比べて,細胞毒性において有意差は認められなかった.
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