研究概要 |
本研究の目的は,骨欠損を形成し,その根表面に生体内吸収性膜,乳酸-グリコール酸共重合体膜を応用した実験群と,膜を応用しない対照群を比較し,GTR法における保護膜として生体内吸収膜が有効であるか否かを検索した。実験には5匹の雑種成犬の下顎P_3,P_4を用いた。実験期間は8週とし,実験終了後,標本を作製し,病理組織学的に検索し,以下の結果を得た。 1.上皮の根端側方向への侵入は,実験群で0.25mm,対照群で0.39mmであった。 2.新生セメント質形成量は,実験群で1.68mm,対照群で0.41mmであった。 3.新生骨形成量は,実験群で0.84mm,対照群で0.46mmであり実験群では欠損部の42%を覆っていた。 4.アンキロ-シスと著しい根面吸収は実験群では,認められなかった。 以上の結果より,乳酸-グリコール酸共重合体膜は,GTR法において有効な保護膜であることが証明された。 主に成人性歯周炎を有する患者に対してGTR法を行い, 保護膜として用いた吸収性膜( 乳酸- グリコール酸共重合体膜) の臨床的効果を評価した。患者は, 年齢24〜68歳(平均年齢48歳)の男性22名,女性38名,計60名であり,垂直性骨欠損あるいは根分岐部病変を有していた。術前,術後6カ月に臨床データを記録した。術後の治癒経過は良好であり,吸収性膜応用による軟組織の炎症,副作用は一例も認めなかった。歯周ポケットの深さの経時的変化は,術前5.7±2.0mm,術後6カ月で2.9±1.2mmであった。また,歯周ポケットの深さの減少量は,術後6カ月で2.8±1.9mmであった。臨床的アタッチメントレベルの経時的変化は,術前9.0±2.8mm,術後6カ月で6.8±2.6mmであり,アタッチメント獲得量は,2.2±1.9mmであった。歯齦退縮量は,術後6カ月で0.6±1.8mmであった。以上より,乳酸-グリコール酸共重合体膜は,歯周疾患治療におけるGTR法の保護膜として有用であることが示唆された。
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