研究概要 |
本研究は医療従事者の職業性アレルギーに焦点を当て,歯科材料関連の物質に対するアレルギー性の実態を皮膚科などと協力し,調査研究するものである. 1.パッチテストの実施 大阪歯科大学ならびに同付属歯科技工士専門学校において教員ならびに学生のボランティアに対して,春季および秋季にパッチテストを実施した.国際接触皮膚炎研究班(ICDRG)の方法に準じて,歯科材料に関連した40種類のアレルゲンをボランティアの背部に貼付した.貼付48および72時間後に背部皮膚を観察し,日本パッチテスト研究会の基準にしたがって判定した.写真撮影,皮膚模型などのデータ収集も同時に行った.その結果,今年度は陽性反応を示したものがなく,昨年度からの合計で水銀,エポキシ,石膏に対してそれぞれ1例ずつの陽性反応であった.また,これらのデータおよび今年度までのデータはデータベースとしてコンピュータに蓄積し,医療従事者の職業性アレルギーについての啓蒙に活用した. 2.歯科材料に対する皮膚科領域でのデータ 池田及び大阪回生病院の皮膚科を受診し,パッチテストを行った患者を対象とし,歯科関連物質38種類のアレルゲンを選択した.それぞれについての陽性率を調べ,その者に対する追跡調査を実施し,歯科治療との関連性について調べた.その結果,皮膚疾患を主訴として皮膚科を受診する患者において,歯科治療が原因と疑われる場合は1%未満と非常に少ないことがわかった.しかし,頻度は低いものの歯科治療における物質が何らかの皮膚症状を生じさせる可能性があることもわかった. これらの多角的なデータ解析のアプローチの必要性が確認され,今後更なる調査研究の実施の必要性が生じた.
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