研究概要 |
これまでに白板症、白板症よりの癌化症例,および口腔扁平上皮癌を用い,免疫組織化学的にLewis^y (Le^y)抗原,TGF-α,P53蛋白(変異型),bcl-2蛋白,およびPCNAの上皮細胞における発現を検討し,それらの発現と白板症における異形成の程度との関連,癌化前後の発現の変化,白板症と扁平上皮癌におけるそれらの発現を比較した。また,Tunel法によってin situでのアポトーシスの変化を検討した.さらに,舌扁平上皮癌由来培養細胞(NA)を用い,抗癌剤および一酸化窒素供与体(SNP)によって上皮細胞にアポトーシスを誘導出来るか否か,およびその際の遺伝子発現の変化を検討し,次のような結果を得た。 1.白板症と扁平上皮癌を比較すると,Le^y抗原およびbcl-2蛋白の発現は扁平上皮癌で弱く,逆にTGF-α,P53蛋白,PCNAは扁平上皮癌で発現がよく強く認められた。 2.白板症において異形成の程度が進むにつれてLe^y抗原およびbcl-2蛋白の発現が弱くなり,TGF-α,P53蛋白,PCNAの発現が強くなった。 3.白板症からの癌化症例においても,癌化前にはLe^y抗原およびbcl-2蛋白の発現がより強く,逆にTGF-α,P53蛋白,PCNAの発現は癌化後強く認められた. 4.Tunel法により組織切片上でのアポトーシスを観察したところ,白板症に比較して癌組織でTunel法によって染色されるすなわち核の断片化がみられる細胞は減少していた. 5.5-Fu,シスプラチンなどの抗癌剤およびSNPによってNA細胞はアポトーシスが誘導され,その際c-myc,c-myb,P53のmRNAの発現が抑制された. 以上の結果から白板症の癌化の過程にアポトーシスが関与していることが推測された.
|