研究概要 |
本研究では、これまでほとんど研究されていない芳香族化合物系排水のメタン発酵に着目して、酢酸資化性メタン生成活性に対する6種類の芳香族化合物の阻害影響を定量的に検討した。また、フェノールに駆致した嫌気性消化汚泥を用いて、フェノールの嫌気的分解に関する回分実験を行い、嫌気性消化におけるフェノールの分解特性および分解特性経路を明らかにした。本研究より得られた知見は次の通りである。 1)酢酸資化性メタン生成活性に対する6種類の芳香族化合物の阻害影響は、芳香族化合物の濃度によって異なる。低濃度では阻害が見られなかったが、限界濃度を越えると、メタン生成活性が急激に低下した。酢酸資化性メタン生成活性が50%阻害された場合の安息香酸、フェノール,カテコール,レゾルシノール,ヒドロキノン,フロログルシノール濃度IC_<50>は、それぞれ49.2,18.6,22.7,40.0,51.6mml・L^<-1>であった。 2)酢酸資化性メタン生成活性に対する6種類のフェノール系化合物の阻害影響は、オクタノール/水の分配系数(logP)の増大に伴って大きくなった。logIC^<50>とlogPとの間には、次のような良好な反比例関係が見られた。logIC_<50>=0.283logP+1.68(n=5;r^2=0.953) 3)フェノールの嫌気的分解速度に及ぼすフェノールの影響は、Holdam式を用いて表現できた。動力学的パラメータk,K_sおよびK_iの値はそれぞれ0.096hr^<-1>,1128mg/Lおよび188mg/Lであった。フェノールの嫌気的分解経路としては、フェノールはまず還元的カルボキシル化反応によって安息香酸に変換され、続いて脂肪酸になり、次に酢酸・水素まで低分子化される。安息香酸と酢酸は,フェノールの嫌気的主要な代謝産物であった。
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