研究概要 |
本研究では,主として下記の3つの方向の研究成果を得た. 1.合成mRNAを用いたH^+-ATP合成酵素サブユニットの転写量と老化 ラットH^+-ATP合成酵素の各サブユニットのうち核遺伝子によってコードされている本酵素のサブユニットについて,各合成mRNAとプローブDNAを用いて、8週齢及び35週齢ラットの各種臓器における各mRNAの絶対量を定量し,以下の主要な新事実を明らかとした. 1)8週齢ラットの各臓器でのATP合成酵素のサブユニットのmRNA量は,高転写グループ(HTG-group)と低転写グループ(LTG-group)の2つに分類された.従って,ATP合成酵素のサブユニットの転写は,2つの異なる転写制御機構で行われていることが示唆される. 2)35週齢ラットでは,驚いたことに,HTG-groupに属する各サブユニットの転写量は,8週齢ラットのそれらの1/5-1/10と大幅に低下していた. 2.ヒトATP合成酵素subunit eとsubunit b遺伝子の転写制御システムの類似性 1)今回クローニングしたヒトsubunit eの核遺伝子は全長4,508bpsからなり,本蛋白質は4つのエクソンにわかれてコードされていた. 2)昨年度発見したATP合成酵素のsubunit bの第1イントロン内にエンハンサーのシスエレメントと類似した配列が,subunit eの第1イントロン内に見出された. 3.ATP合成酵素のsubunit bの第1イントロン内にエンハンサーのシスエレメントに結合する新規の各抽出蛋白質の発見 1)昨年度発見したsubunit b遺伝子の第1イントロン内に存在するエンハンサーのシスエレメントに結合する核抽出蛋白質を解析したところ,4種の核蛋白質がこのシスエレメントに特異的に結合することが明らかとなった. 2)これらの内2つは,SplとBTEBで,他の2つが分子量40〜45kDと65〜70kDの未知の因子であることが明らかとなった.
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