研究概要 |
脳内神経伝達物質あるいは調節因子の内,神経ペプチドは脳内に多く存在する.しかし,それらの生合成酵素に関する研究が遅れており,生理機能・調節機構の解明がほとんど行われていない.記憶に関わるコレシストキニン,サブスタンスPおよびタキキニン類の生合成酵素を単離するため,これら神経ペプチドの前駆体蛋白質を大量に発現させることを計画した.コレシストキニンとタキキニン前駆体遺伝子を組換えし,バキュロウイルスと大腸菌から前駆体蛋白質の発現を行った. 1.コレシストキニン前駆体遺伝子をバキュロウイルスにより蛋白発現を行ったところ,コレシストキニン前駆体と思われる免疫活性は最大で10mg/mlしか発現していなかった.ウエスタンブロットによる検索は失敗した.現在コレシストキニン前駆体一部を含む遺伝子のPCR産物を用いて更に検討中である.2.タキキニンの前駆体蛋白質はHis-Tagとの融合蛋白質として大腸菌から合成した.その結果,不溶性蛋白質として発現し,可溶化に成功した.分子サイズ約20kDaの蛋白質をウエスタンブロットにより確認した.この蛋白質からサブスタンスPが試験管内で合成できることを検討中である.3.蛍光ラベルしたコレシストキニンの合成基質を用いてブタ下垂体から酵素精製し,少なくとも3種類の活性ピークが見つかった.ゲルろ過から分子サイズは約120,80,55kDaであった.これらの酵素がコレシストキニンとタキキニンの前駆体蛋白質を水解するか否か今後の検討課題である.
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