研究概要 |
京都大学理学部地磁気世界資料解析センターで算出公表しているAE(オーロラエレクトロジェット)指数は,太陽風から磁気圏へのエネルギーの流入の研究に用いられる重要な地磁気活動度指数であるので,世界中の研究者がその早期算出配布を望んでいる.しかし,次の理由によりその算出は大幅に遅れ,1988年前半分までしか出版されていない.(1)この指数算出に必要な12観測所の中,ロシア以外の8箇所はデジタルの1分値データを提供しているが,ロシアの4観測所は,デジタル磁力計が設置されていないためアナログマグネトグラムのフイルムコピーを送付してくる.これのデジタル化に時間がかかる,(2)ロシアでは経済悪化のため,観測所の維持が困難になっており,データのコピー作成や流通にも支障が出てデータ入手に時間がかかる. 本研究は,AE指数算出改善のため1910年頃から上記センターが行ってきた一連の努力の線上にあるものであり,ロシアのAE観測所で高品質デジタルデータを取得し,かつ,人工衛星経由の新しいデータ伝送方式を確立して,AE指数を迅速に算出公開することを目的としていた. 進行中のINTERMAGNET計画(地磁気1分値データのリアルタイム取得のための国際プロジェクト)や,別の科研費国際学術研究と連携させて本研究を進めた結果,下記成果を得た. (1)12のAE観測所のうち7ヵ所からのデータの準リアルタイム取得が出来るようになった,(2)このデータを用いてQuick Look AE指数を算出し,INTERNET Home Page上でテスト公開を行えるようになった,(3)1990年と1993年のProvisional Auroral Electrojet Indices(AE11)をデータブック'WDC-C2 for Geomagnetism Prompt Report'として出版・配布した,(4)気象衛星「ひまわり」経由の地磁気データ伝送技術を修得した,(5)地磁気観測と回線経由のデータ伝送について技術を修得・蓄積した,(6)ロシア諸機関との研究協力のあり方について経験を蓄積した. また,この研究の副産物として,20以上の地磁気観測所のデータがオンライン取得出来るようになり,それを用いたクイックルックDst指数算出公開が実現した. これらにより,試験研究として出発した本研究の目的は達成されたと考える.
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