研究課題/領域番号 |
06554027
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
有機化学
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研究機関 | 山口大学 (1995) 大阪大学 (1994) |
研究代表者 |
杉原 美一 山口大学, 理学部, 教授 (30112006)
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研究分担者 |
新本 善英 住化ファインケム, グループマネージャー
真崎 康博 東京大学, 教養学部, 助手 (60199677)
山本 浩司 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (80029438)
矢野 重信 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60011186)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1995年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 含ホウ素共役系 / 安定ヘテロ芳香族 / 双極子モーメント / 分極能 / 非線形光学材料 / 含ホウ素共役系化合物 / 青色光透過性 |
研究概要 |
芳香環を介在させたドナー/アクセプター系を素材として非線形光学研究がこれまで展開し、現在では新規な系の構築が求められていることは言うまでもない。我々は、ホウ素原子の特異共役能に着目し、ヘテロール縮環ボレピンを素材として研究を進めた。ピロロ[3,4-d]ボレピン(1)のN-メチル体とN-シリル体(2)の合成を、新たに達成し、物性を種々精査した。(1)はすでに合成したチオフェン縮環体(3)(4)に比べ酸に対して不安定であり、精製条件探索に時間を要した。また、中間体へのハロゲン置換基導入、ヒドロ錫化の段階に多くの条件検討を必要とした後、新規反応条件を見いだした。(2)についてはN-ケイ素結合が弱いために合成に際して、最新の注意を必要とした。物性精査手段として、すべての骨格原子の核磁気共鳴スペクトル、吸収/ケイ光スペクトル、酢酸/アミンに対する反応性、および分子軌道計算を用い、以下のことを明かとした。 (1)、(2)、(3)、(4)とも基底状態の双極子モーメントは比較的小さい。励起状態と基底状態における双極子モーメント差は、(1)、(2)>(3)、(4)である。また、π電子のホウ素原子方向への非局在化は、一般に系の速度論的不安定化の原因となり、これを解消するようなヘテロールとボレピンの縮環形式が必要とされる。(2)の脱シリル/窒素アニオン生成によって、分子間ホウ素-窒素配位結合-共役系多量体形成が観測される。 ホウ素原子は、上述の有為な特性を持つ一方、周期律表で第二周期に属すため分極性に基づく弱い相互作用を期待することはできない。そこで、天然に存在する元素のなかで、最も原子量が大きく高い分極性を持つビスマスの潜在性に着目し、研究を展開させつつある。さらに、理論計算から、非線形光学材料として注目されているアザアズレンが、ホウ素原子と極めて親和性の高い窒素原子を共役系に組み込んでいることに着目し、新たに、ホウ素配位アザアズレン系化合物合成に着手した。 以上、含ホウ素共役系材料を含芳香環共役系に置き換えうる可能性、その可能性に基づいた分子設計と合成の一般的指針を見いだした。また、有機ホウ素と相補的な特性を持つ有機ビスマス系、含窒素非交互共役系へと研究を展開させた。芳香環を介在させたドナー/アクセプター系に材料としての限界が見いだされつつある現在、ホウ素原子をはじめとする含ヘテロ原子共役系は、充分に期待できる素材と考える。
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