研究概要 |
高分子の重量平均分子量,分子量分布,電気光学・流体力学的等の諸特性を迅速かつ同時決定できるフロー型GPC/小角光散乱(LALLS)/反転パルス電気複屈折(RPEB)装置を試作した。 GPC/LALLS部は,市販品(東ソ-(株),LS=8000S)に一部改良を加えて使用した。本試作研究の心臓部となるRPEB部は,我々が先にバッチ測定用に自作した装置を基本として,±13kv/cm,巾500μmsecの反転パルスが印加できるように改良を加えた。連続して送液されてくる試料溶液の複屈折測定用フローセルは,新たな工夫のもとに,設計・製作した。まず,使用できるセル面数の制限から,平行板電極のかわりに給・排液と電極を兼用する細孔ステンレス管を使用し,光学系へのセルの装着面を確保した。この手法は電極に給・排液が存在するため,電極の孔の近傍で電気力線に歪みをを生じるが,光路中央部にはあまり影響しないため,フローセルには極めて適した設計である。つぎに,電極管の開放部での試料溶液の再混合の問題は,中央に0.2mmの孔をもつ巾0.5mmの微小電極を製作し,セル容量をできるだけ小さく(0.2μl)することで回避した。また,当初計画したイオン強度調節用の連続脱イオン装置は,これを組み込むことにより溶液の再混合が生じ,その後のデータの信頼性を無くすことが判明したので,一時組み込みを中止しているが,今後も最適な脱イオン装置の開発を継続する。 計測制御は,GPC/LALLS装置が市販品であり,自作の電気複屈折装置の計測制御を含めて1台のマイクロコンピュータで行うには,両装置のインターフェイス仕様の違いから困難であり,2台のコンピュータで制御することとした。両コンピュータは,サンプル注入時に出力される信号をトリガーとしてそれぞれ計測を開始する。以後,流速が一定であるため,データは一定時間ごとにトランジエント・コンバータを通して収集され,コンピュータに蓄えられる。電気複屈折データは,フロッピ-ディスク一枚に納まるデータ量に対応する1〜1.5分の測定とした。 以上で基本装置の開発・製作・組立が終わり,全装置系の性能検査,微調整及び必要箇所の再調整を完了した。現在,高分子溶液について基礎的データの収集を行い,物性研究を継続中である。
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