研究概要 |
電子スピン共鳴装置(ESR)と種々の分光測定の装置を組み合わせて,多機能レーザーフォトリシス装置を試作するため,以下ことを行った。(1)波長可変のパルスYAGレーザーシステムを導入して,可視から紫外にいたる種々の波長のレーザー光でレーザーフォトリシスが行えるようにする。(2)ESRキャビティ内でレーザーフォトリシスが行えるよう現有のキャビティを改造して,CIDEPとレーザーフォトリシスの同時測定を試みた。(3)レーザーフォトリシス測定用の光学系,測定系を整備し,ESRキャビティ内でのフォトリシスにより生成する過度種の吸収,蛍光,ESRの同時測定を試みた。(4)ゼーマン分裂したスピン副準位間にマイクロ波による遷移を起こさせ,光検出ESRの測定が可能なよう装置の改造を試みた。装置の調整,性能のチェックを行と共に次の研究を行った。 (1) ESRと過渡吸収測定による光反応初期過程の研究 キノキサリン,フェナジン,キノリンなど芳香族アザ化合物の2-プロパノール中での水素引き抜き反応で生じるラジカルのCIDEPについて詳しい研究を行った。これらのCIDEPは著しい濃度,励起光強度,遅延時間依存性を示し,数種の分極機構の関与が示されたが,特に高濃度で観測される全放出型のスペクトルは,ラジカル-三重項機構による可能性が高いと結論された。実験で得られた信号の時間変化を種々の反応と緩和のスキームから予測されるものと比較検討し,高濃度でのT-T消滅のCIDEPに与える影響が論じられた。 (2)CW,FT時間分解ESRによる光反応およびCIDEPの研究 2-プロパノルルラジカルの種々の分子によるクエンチングの反応速度,CIDEPの三重項機構の磁場依存性について詳しい研究が行われ,多くの新しい知見が得られた。
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