研究概要 |
(1)静的3点曲げ法ならびに振動リ-ド法を用いて,Cr薄膜のヤング率を測定した.膜圧が5.1μm以上では,薄膜のヤング率は248.8GPaでバルク材のヤング率252GPaと良好に一致した.しかし,膜圧が0.248μm以下では,膜厚の減少に伴ってヤング率は上昇し,膜圧が0.248μmではヤング率は568GPaとなった. (2)走査型電子顕微鏡およびX線回折から,(1)で測定したCr薄膜の組織観察を行った.膜圧が1〜2μm以下では明瞭な結晶組織は観察されず,アモルファスライクな組織となっていることが判明した.しかし,膜圧が1〜2μm以上では明瞭な柱状晶が観察され,これらの組織の相違とヤング率の変化とは良好に一致していることが明らかにされた. (3)厚さ2.9μm以上のパ-マロイ薄膜のヤング率は222.0GPaであった.この値はパ-マロイのバルク材のそれと一致した.厚さ1.1μm以下のパ-マロイのヤング率は厚さが薄くなるほど増加する傾向が認められた.厚さ,0.276μmではヤング率は296MPaとなり,バルク材の約1.48倍のヤング率が得られた. (4)厚さ減少に伴うパ-マロイ薄膜のヤング率減少について考察するため,走査型電子顕微鏡による微視組織観察を行った.その結果,スパッタリング薄膜の厚さ方向に2種類の組織が存在することが判明した.1つは,膜厚の薄いところでは組織が一様ではなく,アモルファスライクの組織が観察された.この組織の厚さは1〜2μm程度であった.それ以上の膜厚では,扁平な柱状晶が観察された.ヤング率の増加とこれら2つの組織との対応関係は良好に一致しており,ヤング率の増加が主として組織によるものと推論された.
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