研究概要 |
気密化された建物では,隙間からの自然換気は少なく,室内空気が汚染されやすいため,換気システムを設け適正な換気を行うことが重要となる.設置された換気システムが計画通り機能し,適切に換気されているか評価するには,従来のような給排気量測定や多数室換気測定だけでは不十分であり,気流分布を考慮した空気齢の概念に基づく測定を行う必要がある.以上より,本研究では,空気齢による試験家屋を対象とした実験と実在建物を対象とした実測を行い,空気齢に基づく実在住宅を対象とした測定法や評価法に関する基本的な事項を性能診断マニュアルとしてまとめている. 試験家屋の実験では,(1)3種類の換気システムを用い,3通りの換気経路を設定して空気齢を測定した結果外気の各室への分配状況は予想された通りとなり,換気システムの性能を評価する上で空気齢の有用性が示された,(2)ステップアップ法とステップダウン法の同時測定を行い,隙間から漏入する外気の空気齢を実験的に求めることができた,(3)隙間から漏出する空気の影響を排出負担率を用いて明らかにした. 実在住宅の実測では,(1)各点の空気齢は給気口がある居室で小さく,排気口を持つ浴室やトイレ等で大きな値を示すことから,換気経路に沿って外気が分配されている様子が窺えた.一方,換気経路から外れている2階ロフトでの空気齢は特に大きく換気に問題があることが明らかになった,(2)間仕切扉を閉とした場合と比べて,開の場合では外気は各室へ均一に分配されることや,台所の換気扇を運転した場合,各点への外気の到達は速くなること等が示された. 性能診断マニュアルでは,測定法に関する項目として,(1)予め必要な情報,(2)環境条件として必要な情報,(3)トレーサーガスによる空気齢の測定法の特徴,(4)測定の際の留意点等について記している.又,評価法に関する項目として,(1)空気齢,(2)空気交換効率,(3)外気漏入率,(4)排出負担率,(5)漏気の空気齢について記している.
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