研究概要 |
本申請により,低速陽電子モデレーター及びパルス化システムの開発を行った.前者の目的のため,低速陽電子を磁場で収束し,ビームとする小型のビームラインを製作した.このビームラインでは,放射性同位元素からの高エネルギー陽電子を分離するため,低速陽電子ビームを90度方向に曲げる.その後,低速陽電子をマイクロチャネルプレートおよび半導体検出器で検出する.この目的のため,MCP,半導体検出器,および低速陽電子のエネルギーを測定するためのリターディング・グリッドを装備した試料チャンバーを製作した.この装置により,Wリボンモデレーター,ニッケルコーン型モデレーター,ニッケル薄膜モデレーターをハイブリッドに結合したモデレーターを開発した. 以下に,設計した超短パルス低速陽電子線ビームラインの仕様を述べる.放射性同位元素から放出された陽電子は,初年度で開発した,ハイブリッド・モデレーターに入射し,低速陽電子へ変換される.モデレーターから放出された低速陽電子は,磁場と電場により試料方向へ導き出される.エネルギー弁別の手法として,電場により軌道を変える手法(EクロスBフィルター,Eは電場,Bは磁場)を用いる.エネルギー弁別を行った後,低速陽電子を任意のエネルギーに加速するため,線源部全体に電圧をかける.任意のエネルギーに加速された陽電子は,試料に打ち込まれる.次に,陽電子ビームをパルス化する装置の概略について述べる.まず,入射した直流(DC)の低速陽電子ビームを,チョッパーで断続する.ここでは,グリッドにパルス電界をかけることにより,半値幅が5ns程度のパルスを作り出す.チョップされたビームは,バンチャーの周波数の整数分の1の動作周波数のサブ・ハ-モニック・プリ・バンチャーと150MHzの動作周波数のバンチャーで圧縮される.コンピューター・シュミレーションにより,ドリフト・チューブを通過した後のパルス幅は100ps程度であると予想される.寿命測定は,パルス化装置のタイミングパルスと,光電子増倍管で検出した消滅γ線の時間差を測定することにより行う.
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