研究概要 |
生体活性材料は,体内で骨類似のアパタイト層をその表面に析出させ,組織と直接結合する能力をもっている。生体不活性なポリメタクリル酸メチル(PMMA)やシリコーンに生体活性が付与されれば,優れた医用材料としての応用範囲は拡大される。ここでは,生体活性ガラス(CaSiO_3)やシリカ(SiO_2)の微粒子を懸濁されたアルコール・THF系溶液中で超音波刺激し,これら微粒子を基板表面に超音波インプランテーション(US-IP)することによって,PMMAへの生体活性の付与を試みた。 1. ポリメタクリル酸メチル(PMMA) -50CaO・50SiO_2生体活性ガラス粒子系 30mgガラス粉末を40THF-60エタノール(vol%)中に分散させた最適懸濁液中でPMMA基板をUS-IPすると,ガラス粒子は不均質に表面に打ち込まれた。これはある程度の空間的規則性をもって超音波エネルギーが集中するためと考えた。すなわち,集中領域では,PMMA基板-深部ガラス粒子層-表面ガラス粒子層-表面PMMA被膜の様に,基板上に4層構造が確認された。集中のない領域では,深部ガラス粒子層とPMMA層が観察されなかった。いずれの場合も,体液環境下で基板表面にはアパタイトが析出し生活活性であった。 2. シリコーン-CaSiO_3ガラス粒子系 2液型室温硬化型シリコーンのゲル化硬化途中で,エタノール(100%)を分散液にUS-IPすると,ガラス粒子がほぼ均一に表面に打ち込まれ,擬似体液中でアパタイトを析出し生体活性が付与できた。しかし,ゾル-ゲルシリカ粒子およびFumed silica(コロイドシリカ)懸濁系ではUS-IP打ち込みは可能でも,生体活性は示さなかった。これは,粒子自身の性質に依存するものと考えられた。
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