研究概要 |
メチルパラジウム(II)錯体を触媒とする3,6-ジ(P-トリル)-1,2-ジイソシアノベンゼンの重合で螺旋状ポリ(2,3-キノキサリン)を螺旋の右、左巻き方向を制御して高収率で合成することを試みた。先づ、光学活性キラルホスフィンをパラジウム(II)の配位子とする触媒を用いた1,2-ジイソシアノベンゼン類の重合反応では不斉誘導は起るものの選択性は低かった。幸いに、五量体および六量体のキノキサリニルパラジウム(II)ホスフィン錯体はシリカゲルを固定相とする液体クロマトグラフィーによって右巻および左巻キノキサリニルパラジウム(II)ホスフィン化合物に分離、単離することに成功した。これを触媒とする1,2-ジイソシアノベンゼン類の重合では、その巻き方向を継続して重合反応が生長することを見出した。この方法は光学分割を含むため効率の良い方法とは言いがたいものであった。次に、開始剤として2′-メトキシ-1,1′-ビナフチル-2-ヨウダイドの光学活性体をパラジウム(O)ホスフィン錯体と反応させて調製し、そのキラリティーを利用してポリ(2,3-キノキサン)の螺旋巻き方向を制御することを試みたが、不斉誘導率は低いものであった。最近、軸不斉光学活性体1,1′-ビナフチル-2-ヨウダイドとパラジウム(O)ホスフィン錯体の反応で開始剤を調製し、一当量の3,6-ジ(P-トリル)-1,2-ジイソシアノベンゼンを反応させて、安定な2-(1,1′-ビナフチル)-3-キノキサリニルパラジウム(II)ヨウダイド・ビス(ホスフィン)錯体として単離し、それを触媒に用いる3,6-ジ(P-トリル)-1,2-ジイソシアノベンゼンの重合方法を確立した。この方法により高収率で螺旋の巻き方向を制御してポリ(キノサリン)を合成することに成功した。さらに、高分子ポリ(キノキサリン)の生長末端に官能基を導入する方法も確立した。これらの成果に基づいて新規機能性物質の合成が今後の課題である。
|