研究概要 |
西条柿商品化の課題,即ち,脱渋後での急激果実軟化の抑制を目的に,脱渋処理することなく貯蔵した西条柿について,低温・短時間の炭酸ガス脱渋を検討した.その結果,濃度・炭酸ガス:空気=6:1,温度・10℃,時間・12時間の炭酸ガス処理が有効であった.このことは以下の試験結果に基づく.1:貯蔵(温度・0℃)30日以降では,渋味を呈する水可溶性タンニンは収穫時の1/20〜1/25の含有になる.水可溶性タンニンは,貯蔵始めより漸減し,30日目には80〜110mg/果肉100gとなり,それ以降では含量の低下はなかった.2:貯蔵(温度・0℃)50日の果実でも,果実果頂部の果肉硬度は,150〜200gであり,収穫時の硬度を維持した.果実の硬さは,果皮から内側へ5mm以内の部分,即ち,果実外周部の果実硬度に依存する.また,果実内では果肉硬度に差異があり,蔕側が最も高く,果頂に近づくほど低くなる.3:酸素濃度10%の場合,炭酸ガス濃度は60%以上では速やかに,炭酸ガス濃度100%の処理と同様のパターンで果実内へ拡散した.炭酸ガスの拡散は,濃度40%以下では遅くなる.脱渋処理に際し,炭酸ガスは急激に果実内へ拡散し,同時に果実内の空気は外部へ吐出される.この炭酸ガスの拡散は,酸素濃度に依存する.4:炭酸ガスの果実内への拡散は,温度に依存し,10℃でのそれが最も速やかであった.この拡散は処理後3時間以内に速やかに進行し,その量は総拡散量の80%に相当する.その後も炭酸ガスの拡散は処理後6時間まで続くが,それ以降では停止した.5:貯蔵温度0℃が西条柿・長期貯蔵に最適温である.そのため脱渋処理の温度との較差が課題になる.10℃までの昇温では著しい果実軟化はなく,0→10℃変温の場合,10日目の果実でも果頂部の果肉硬度は100g以上であった.6:以上の試験により処理のガス濃度,時間及び温度を検討し,脱渋の早晩,脱渋後の果実軟化を調べた.濃度・炭酸ガス:空気=6:4,温度・10℃,時間・12時間の処理では,処理後2日目で完全に脱渋し,果実軟化も処理後10日まで抑制した。
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