研究概要 |
本研究の目的は,人工リ-フ等の海浜ないし浅海に設置する人工構造物の転倒・埋没等に対処するための設計や保全対策を,水理模型実験を用いて究明することである。水理学的な課題は,かかる構造物周辺の波浪制御の効果と底質の移動に関与する流れ等の水理特性を実験的に明らかにすることである。なお,2次元不規則波の造波装置を購入した。 初年度では,主として大橋・戒能が,瀬戸内海の島嶼海岸に多いポケット・ビ-チを特定し,その固定株(1/40)模型を既存の平面起波水槽(20m×15m)に作製し,漁礁を兼ねた透過性離岸堤の設置に関わる波浪制御を中心に,規則波による実験を14ケースの各平均15回を実施した。 実験から,波浪制御の効果は,堤体中央部では既存の設計方針が満たされた。しかし,浜両脇の漁港と岬地形との影響が,小規模海浜の3次元的な回折波を励起し,局所的な越波水量分布の集中化が現れたので,改善策として離岸堤の堤長と開口部幅との最適設計条件を究明した。 次年度では,主として大橋・藤原が2次元不規則波動水槽を用い,4種類のリ-フ(傾斜ステップ型,30,50,70cmの各バ-型)について2種類のエネルギー・レベルの有義波が作用する場合の8側点の波高減衰効果を検討した。実験では,7〜9種類のリ-フ天端水深(2cm刻み)に対する反射率,有義波,波高ペクトル,最高及び全エネルギー,セットアップを計測し,各リ-フごとの波浪制御構造物として適正な範囲の水理条件を求めた。具体的には,1/40〜1/50の模型を想定した場合,潮位の最高位・平均・低位の各条件に対する水理特性を検討し,各リ-フの最適な適用範囲を見いだした。これらを基礎に今後も実験を重ねて設計指針を求める。なお,これらの成果は,暴風時の制御対策のみでなく,平穏時におけるレジャーサイトとしての検討に資することができる。
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