研究概要 |
本研究の究極的目的は,植物の状態を直接表現する物理的パラメータを植物生体システムを乱すことなく無侵襲で計測する技術を開発することである。具体的には,(1)テクスチャー解析法などのノンジオメトリックな特徴量を用いて画像生体計測を効果的に適用する技術を開発する(2)画像データから得られる統計的特徴量と環境計測データを総合的に処理するセンサーフュージョンを実現する(3)カルマンニューロを適用しセンサー信号から生体情報を得るシステムを開発する,などである。 前年度は,基本ソフトウェアの開発およびファイトトロンを中心とするデータ収集のための植物育成装置を完成させた。その後,装置内で作物を栽培するとともにソフトウェアのチューニングを行った。この過程は主に,(1)生育システムに最適な濃度共起行列の大きさ(最適濃度階調)を決定する,(2)画像の統計的特徴量14個の内から有効特徴量を選択する,(3)カルマンニューロの最適構造を決定するなどの作業が含まれた。 最終年度である平成8年度は,前年度からの基本ソフトウエアの開発およびファイトトロンを中心とするデータ収集のための植物育成装置を改良し,装置内で作物を栽培するとともにソフトウェアのチューニングを引き続き行った。 前々年度からの課題であった共起行列の要素間の距離および角度を多様に選択できるという自由度の有効性についての検討結果では、自由度が大きい割にはその効果が顕著に表れないという事実が本実験データについては結論づけられた。本研究ではノンジオメトリツクな画像特徴量を抽出することが主題であり、テクスチャー解析のみを対象とする必要はないと考え、研究過程で開発が進められていた数値網膜(有限要素網膜)の適用に関して多くの努力が傾注された。結果的にはテクスチャ解析よりも高性能・高機能な画像認識システムが構築されることとなった。
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