研究概要 |
簡便に施行可能な右心補助システムとして末梢静脈から挿入する静脈内軸流血液ポンプの開発を進めた.システムとしては,動脈内軸流ポンプ(Hemopump)を応用し,末梢静脈より順行性に挿入するロータ,ステ-タ及びカニューラを設計,作製し,駆動系に装着した.モック回路にて,圧較差40mmHgに対し4.0L/minの流量が得られた.成山羊を用いた急性実験において末梢静脈からの挿入は,透視下に下大静脈に吻合した人工血管よりバルーンカテーテルによるガイドにて特に問題なく施行し得た.また,肺高血圧を作製した状態において,右心軸流ポンプを駆動することにより右房圧は9.0mmHgから3.3mmHgに減少し,大動脈流量は1.57L/minから4.13L/minに増加した.左心補助下に心室細動を誘発したところ,右房圧は12.7mmHg大動脈流量は,2.6L/minであったが,本システム駆動により,夫々9.3mmHg,3.9L/minとなり,右心負荷の軽減および流量の増加を認めた.さらに,慢性実験として,正常心成山羊3頭を用い,左側臥位において下大静脈の腎静脈流入部より末梢側に人工血管を縫着し,本システムの挿入を行った.2頭で48時間の補助を行い得たが,1頭にケーブル断線を認めた.本システムは,高速回転をケーブルを介して伝達しており,軽度のケーブルの折れも断線につながる.今回の実験では健常な山羊を用いたため,その動きは激しく固定が完全には行えず断線を生じた.臨床応用は,安静状態で使用されるため特に問題はないと考えている.試作システムでは,ロータおよびステ-タ部の抗血栓性に問題があり,強力な抗凝固療法が必要であったが,遊離ヘモグロビン値および血小板数の変化は許容範囲内であった.また,三尖弁,右室,肺動脈弁および肺動脈において,接触による変化を認めたものの軽微であった.従って,軸流ポンプを用いた本システムは,適用・離脱が容易な短期使用用右心補助システムとして有望と考える.
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