研究概要 |
音声教育を効果的に行うには,教師が音声に関する十分な知識を持つことが必要であり,子音・母音の知識を体系的に学ぶ上で,国際音声記号(以下IPA)を習得することは有効と考えられる。音声学習には,聞き分け訓練の繰り返しが不可欠だが,テープ教材は頭出しが煩雑で,ランダム出力も困難である。そこで本研究ではパソコンを用いたIPA自習教材を開発した。本教材は基本的には(1)コンピュータ画面に表示してあるIPAをクリックして音声を聞き,音声と記号の対応を記憶する練習モード、(2)ランダム出力された音声を聞き,画面をクリックして正誤をコンピュータに判断させるテストモード、の2つからなる。テストモードは学力評価に使うわけではなく,学習者が自分の長所,短所を知り,さらに練習すべき点を示唆する役割を果たす程度である。練習モードとテストモードは,それぞれ母音,子音,韻律の部に分かれ,母音の部は,基本母音,前舌母音,後舌母音だけ,…のように,あまり1度に多くのIPAを見なくても良いように,複雑さの程度を選択できる。他の部も同様である。開発した教材を大学生に試用させたところ,練習後の得点が飛躍的に向上するなどの成果が見られ,被験者の反応も好意的であった。従来,専門的教育によらなければ習得の困難だったIPAが容易に独習でき,紙面上の記号を音声テープと平行させて聞くだけだった学習方法に大きな変革を与えた点で,本教材開発の意義は非常に大きいと言える。これらの研究成果の一部は,1995年9月23日に東北大学で行われた平成7年度日本語教育方法研究会において発表を行った。
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