研究概要 |
本研究では,多波長光電子集積回路(多波長OEIC)を実現する際の鍵になるコンパクトな波長選択素子を設計・試作し,多波長OEIC実現に向けた技術課程および達成される性能を明らかにした. 1.pn接合フォトダイオード上に誘電体多層膜による光学フィルタを直接堆積して形成される垂直入力形波長選択素子を設計・試作し,これを集積化した多波長受光ICを実現した.アルミマスクを用いたリフトオフ法により誘電体多層膜の微細なパタ-ニングを実現し,最終的には635〜830nmの範囲の4波長を1チップで分光・検出する4波長受光ICの開発に成功した. 2.上記の試作の結果判明した問題といて,波長数を増加した場合に,それぞれを識別する光学フィルタを作成する工程数が増加し,その加工が困難になるという点があげられる.この問題を解決し,さらに多重度を増加することを目的として,単一の誘電体多層膜により多数の波長に対するフィルタを一括して作成する方法を考案した.この方法についての計算機シミュレーションを実施し,波長特性の制御性などの定量的評価を行った. 3.多波長OEICにおいては,波長選択素子の他にポリイミド導波路,面発光レーザ等を集積化する必要がある.これらの素子を集積化し,多波長光ハイパーキューブなどの大規模なマルチプロセッサネットワークを構成した場合に達成される性能を評価した.特に,使用可能な波長数に関して評価を行った結果,光導波路幅を20μm程度に微細化し,誘電体多層膜フィルタの膜厚を8μm程度,レーザのゲインバンド幅を100nm程度とした場合,現在の加工精度で約8波長の多重化が可能であることが判明した.この場合,多波長光ハイパーキューブネットワークの面積的複雑さは,約1/64に減少することを示し,波長多重化の有効性を実証した.
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