研究概要 |
緊急時には、情報伝達の阻害要因とし、伝達メディアをとりまく自然環境の破壊、災害までの時間的切迫性、さらに情報の受け手の主体的な要因などがあり、情報伝達は多くの面で平常時のそれとは本質的に異なる。本研究は、災害警報伝達を阻害する要因にたいし「頑健性(Robustness)」を高める諸方策を探る目的で行われた。実験が対象とした災害警報は、東京都の東海地震警戒宣言と、新宿駅列車事故による有毒ガス流出警報に関するものを用いた。伝達阻害状況を、アナウンサーの読み上げる警報を所要のインターバルで断続させることによって実現した。妨害の程度として3水準(60,50,40%)を用いた。実験条体として、警報内容の難易度(難・易)、音声アナウンスの性別(男女)、伝達スピードの速さ(遅・標準・速)、読み上げ方法(全文反復、一文反復)を設定した。全体で7実験群を構成し、各実験群に27名を割り当てた。被験者は、新宿区内在住の20から60歳の女性186名であった。1995年1月21,22日及び2月4日の3日間に実施した。実験結果は、情報伝達率、情報理解率などを従属変数として分析され、実験群の間に明瞭な差がみられ、警報作成の方策により、妨害要因に対して頑健性の高められることが実証された。以上の結果をふまえ、既存の災害警報の「頑健性」診断指針と「頑健性」のある災害警報作成のためのガイドラインを作成する予定である。来年度は、テレビメディアなどにおける「頑健」な情報作成の方策に関する研究に発展させたい。
|