研究概要 |
地球温暖化の主な原因は二酸化炭素による温室効果であるが,それよりも微量であるにもかかわらず,1分子当たりの温暖化寄与率が大きいメタンガスの動向が注目されている。近年のメタンガス濃度の増加は著しく,世界各地でその動態解明の努力がはらわれている。しかしながら,現時点ではメタン収支に関する十分な理解が得られているとはいえない。例えば,メタンがどのような地表面からどの程度放出されているか,あるいは,どの程度吸収されているか,ということについてほとんど明らかではない。その主な理由は,大気中のメタンガス濃度が非常に低く,現在の測定器の技術的な限界があるためである。 このような状況を鑑み,我々は開光路を有する高感度で,応答の早いメタンガス変動計を試作することにした。本研究の最終的な目的は,メタンの輸送量を最も仮定の少ない測定法である渦相関法で測定し、メタンガス濃度の変動機構と輸送機構を解明するとともに,メタン収支を明らかにすることである。そのため,本研究ではHe-Neレーザーを利用したメタン変動計の開発に精力を傾注した。試作 たメタンガス変動計の主な特徴は次の通りである。 (1) 測定感度は15.6ppm/V, (2) S/N比はピーク値で0.6ppm, (3) 感度は光源の乱れには関係ない, (4) 開光路長は25cm,これは標準型の超音波風速計のスパン長と同じである。 試作したメタンガス変動計は,実験室では上述のような性能を示したが,実際の野外条件下では, He-Neレーザー光源が不安定となり,動作が不安定となることがあった。今後も開光路方式のメタンガス変動計の開発をめざして研究を継続してゆく予定である。
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