研究概要 |
近年、我国の酸性雨の地域はむしろ拡大する傾向にある。この様な広域における酸性雨の発生源・機構を解明するには、まず全国的な観測網において降水中の化学成分を連続的・長期的にモニタリングしその実態を把握しなければならない。その為には、人の手を必要とせずに、降水中の化学成分を自動連続的に測定できる装置の実用化とその装置を利用した広域モニタリングシステムの開発が必要である。そこで、本研究では、(1)人手を必要とせずに降水を自動的に採取しその化学成分を連続的に測定する装置を実用化する事、(2)長期間の降水中の化学成分のモニタリングを通じて生じる技術的問題を解決する事、(3)パソコン通信等により広域モニタリングの集中管理を実用化する事等を研究目的とした。具体的には、降水中の化学成分(イオン種)を連続的にモニタリングする為に、降水の自動採取装置と化学イオン種を分析するイオンクロマトグラフとを組み合わせた自動連続測定装置の製作を検討した。イオンクロマト分析により、降水中の陰イオン(F,Cl,NO_2,SO_3^<2->,NO_3^-,PO_4^<3->,SO_4^<2->)と陽イオン(Na^+,K^+,NH_4^+,Mg^<2+>,Ca^<2+>)をそれぞれ約15分程度で分析する事が可能となった。降水自動採取装置と光フィバ-液面センサーにより1mm毎に降水を自動採取した試料をイオンクロマトグラフに注入し化学イオン種の分析を行うが、これら一連の操作・分析はすべてパーソナルコンピューターで制御し自動的かつ連続的に降水中の化学成分の測定が行えるシステムを平成6年度に実用化した。平成7年度は、実用化した自動連続測定装置を実際に、横浜市(慶應大学理工学部屋上)に設置し1年間に渡り装置のテストランを行った。このテストランを通じて、本装置の有用性が確認されたばかりではなく、降水による大気汚染物質の除去過程及び酸性雨の生成過程を解明する上で興味深い多くの観測データと知見が得られた。
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