研究概要 |
喉頭摘出者のための音声回復の手段の一つとして,前頚部に振動子をあてて音を声道に送り込む電気式人工喉頭がある。これは代用発声法の中では声の修得が最も容易で高齢者にも適している長所がある反面、生成音声は極めて不自然であるという致命的な欠点があった。 昨年度は,人工喉頭音声が自然性を向上させるために音声の自然性を決定づけるイントネーションを喉頭摘出者自身が発する呼気圧で制御させる最適な方法を見いだしている。その上で,本年度では実用器を作り喉頭摘出者に適用して有効性を確認した。本年度に得られた成果は下記の通りである。。 1)呼気圧制御型の電気式人工喉頭を設計する上で問題となる,呼気圧-ピッチ周波数変換関数の設定についてそ最適なパラメータを決定した。実験では,人工喉頭音声の自然さと、使用者の主観的な制御のしやすさの観点から最適パラメータを導き出した。また,色々な気流抵抗で上記の実験を行ったところ,気流抵抗がある範囲であれば人工喉頭音声や使い勝手には影響しないことが分かった。訓練に関しては一日15分で一週間あれば自然なイントネーションを生成できることが分かった。しかし,被験者による差異は大きく,笛式人工喉頭を使用していた人達には速効性があるが,食堂発声者の場合には訓練に時間を要することなどが明らかにされた。以上のことを踏まえて,試作器を完成させた。 2)試作器を参考にしながら、企業の協力のもとで,センサ部,変幹部,振動子が一体となった呼気圧制御型人工喉頭を開発し,その有効性を確かめた。本装置は,食堂発声法が困難な人達や,喉頭摘出直後の人達には十分利用する価値があることを確認した。なお,本研究成果に基づいて試作された装置は,NEDO福祉用具実用化開発費助成制度で採択され,2年後には共同研究者が所属する(株)電制において製品化されることが決定し,広く普及させる足がかりを得た。
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