本研究は、戦後の日本社会における宗教の変容を考察するために、個別に宗教団体の信者数をはじめとしたデータの変化を統計的に把握することを目的としている。日本の宗教団体の信者、教師、包括法人数に関する資料を最も長期に、かつ網羅的に調査してきたのは文化庁編『宗教年鑑』である。本研究は『宗教年鑑』に記載された膨大なデータをコンピューターに入力し、戦後の宗教団体の動向を総合的に捉える。 現在マスコミをはじめ、一部の新宗教研究者の間で「宗教ブームが」指摘されている。そうした場合に『宗教年鑑』記載の信者数が取り上げられ、いかに多くの日本人が仏教や神道の信者と見なされているかが指摘される。本研究は、現代社会における新宗教の隆盛や既成宗教の衰退といった推測を一切すてて、これまで日本の宗教団体の信者、教師、包括法人数に関する資料を最も長期に、かつ網羅的に調査してきた文化庁編『宗教年鑑』を用いて、戦後の各教団、宗教系統の信者数の変化を捉えようとするものである。この研究によって、戦後の宗教の動向を均質の資料によって、総合的に把握することができた。 これまでも国内において『宗教年鑑』記載の宗教法人の信者数や教師数に言及されたことはかなりの数に昇る。しかし一般的には、引用する場合に必要な個々の教団の信者数の規定の問題などはいっさい無視されて引用されているのが実状である。 欧米ではこうした調査は進んでおり、ヨーロッパ価値観調査やギャラップ社による50年以上にわたってアメリカ人の宗教と行動に関する詳細な世論調査がある。今回の研究は、欧米との比較の上からも、日本の現状の理解の上からもきわめて貴重な研究であるということができる。
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