研究課題/領域番号 |
06610035
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
倫理学
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
上妻 精 共立女子大学, 総合文化研究所, 教授 (10054298)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1995年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1994年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ヘーゲル / 精神現象学 / 意識の世界性 / 神の死 / 意識の経験の学 / 絶対知 / 現象学 / 思弁 / ラインホルト / フィヒテ / シェリング / 精神の現象学 / 二重否定の論理 / 反省哲学 / 個体性 / 客観性の形而上学 / 主観性の形而上学 / スピノザ哲学 |
研究概要 |
1 『精神現象学』を貫く根本的な問題意識の原型は、若えヘーゲルが友人シェリングに送った書簡に見る「神に近づくとはいかなることを謂うのか」という問いのうちに見出される。そして、この問いは、ヘーゲルにとっては宗教と哲学と政治の三つの文脈で切実であった。 2 この問いの答えを、若えヘーゲルは「実践理性の要請の満足」のうちに見出した。そして、このことはカントの二律背反における有限性と無限性、因果性と自由、現象界と教知界といった対立の主服と意味するだけでなく、カントにおいて無制的な概念であった霊現と世界と神とが相互に統合することを意味した。この課題がヘーゲルとして、合一哲学に赴かしめ、コラに無限法の論理と、意識を越えて精神の立場を成立させた。ヘーゲル哲学がカントの理論哲学との対決ではなく、実践哲学との対決を通して成立していることは重要な留意点である。 3 「神に近づくとはいかなることを謂うのか」。この問いが、やがて「有限な生から無限な生への高まり」の問題となり、さらに理念を認識する「哲学への導入」の問題となり、それが「意識の経験の学」としての『精神現象学』の成立につながっている。 4 『精神現象学』の構造は、霊現と世界と神という合理的形向上学の主題に代って、意識と世界と絶対実在の三者が推理的連活して総合するという構造となる。この意味でヘーゲルが方言で語る「意識の世界性」の言葉は、現象学の構造を理解する上での鍵概念である。絶対知は意識と世界との相互転換を通して生まれる絶対実在の自己意識を主体性の立場に転換するところに成立する。 ヘーゲルをして「神に近づくとはいかなることを謂うのか」との問いを立てさせ、『現象学』を書かしめるに至った根本経験は、ヘーゲルが『信仰と知』で語る「神は死せり」の感情である。
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